『永遠についての証明』は、天才的な数学の才覚を持つ三ツ矢瞭司と周囲の人物たちが、その才能に翻弄される物語です。
岩井圭也さんのデビュー作であり、2018年の第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作となっています。
- 『永遠についての証明』のあらすじ
- ネタバレありのレビュー
- 『永遠についての証明』の次に読む小説
『永遠についての証明』の基本的な情報やあらすじ、登場人物の部分はネタバレしていませんので、未読の方もぜひお読みくださいませ。
『永遠についての証明』基本情報とあらすじ
書名:永遠についての証明
著者:岩井圭也
出版社:KADOKAWA
出版年月:2018年8月
本の形態:単行本・文庫
ジャンル(またはテーマ):才能、青春
その他:第9回(2018年)野性時代フロンティア文学賞受賞作(岩井圭也さんデビュー作)
ISBN:9784041072196
大学准教授の熊沢勇一は、かつての親友であり、若くして亡くなった天才数学者・三ツ矢瞭司が遺した一冊のノートと向き合う。そこに記されていたのは、未解決問題「コラッツ予想」の証明と思われる記述だった。それは、世界を揺るがす大発見か、それとも――
熊沢は、まばゆい才能を持つがゆえに孤立を深めていった瞭司との過去を辿りながら、彼の最後の思考に挑む。友情、嫉妬、そして後悔。数学の世界を舞台に、一人の天才の苦悩と、彼を愛した人々の青春が描かれる、感動の物語。
『永遠についての証明』の主な登場人物

三ツ矢瞭司(みつや りょうじ):天才的な”数覚”の持ち主。大学で数学という同じ言語で話せる友人や先生と出会う。
熊沢勇一(くまざわ ゆういち):特別推薦で数学科に入学。瞭司が遺したノートの解読に奔走する。
斎藤佐那(さいとう さな):2人と同様に特別推薦で数学科に入学。数学オリンピック銅メダリスト。後に、エンジニアになる。
小沼先生(こぬませんせい):瞭司を大学に呼んだ張本人で、瞭司が唯一「師」と仰ぐ人物。
田中:大学の先輩(長髪の方)。
木下:大学の先輩(坊主の方)。
平賀:「正しさ」を求める数学者。教授。
『永遠についての証明』ネタバレありの感想・レビュー

ここからは、ネタバレしていますので、お読みになる方は気をつけてくださいませ!
数学は美しい
私は根っからの文系人間で、数学は非常に苦手だ。
でも、この作品はスラスラ読めたし、数学が美しいとさえ感じた。
自慢ではないが、これまで数学を美しいと感じたことなんて一度もなかった。
よくわからないし、授業やテストもただただ苦痛という感じ。
それにも関わらず、数学に対して美しさを感じさせたのは、おそらく描写の美しさだろう。
数学ができる人の世界はこんな風なのか、と一面だけでもうかがい知ることができた。
そして、それが見える人を少しだけ羨ましくも思った。
誰かが解ければいい
学問の探求をする者たちには、未来につなぐ意識がある。
『永遠についての証明』を1度目に読んだときは、そこまで考えなかったことだ。
今回再読して、なぜそれを強く感じたのか。
それには、『チ。-地球の運動について-』が関係している。
先日、アニメ『チ。-地球の運動について-』の1~10話を一気見した。
このアニメでは、この世の真理を求める人たちが次の人次の人へとバトンをつないでいく。
自分は死ぬまでに解けなかったけれど、ここまでは解いた。
そうして自分が今までやってきたこと、その資料を次の人に託す。
自分が解けなくても、誰かに真理を見つけてほしい。
そんな気持ちがこの作品と共通していると感じた。
瞭司も自分が死んだあと、プルビス理論を託すことを考えた。
数学者はいつか死ぬが、数学者のつくった理論は何百年と生き続ける。プルビス理論は何世代先までも存続し、数学の版図に組みこまれなければならない。
誰かに託されなければならないのだ。(本文より)
今、当たり前だとされている事実も、過去の研究者たちの試行錯誤、紆余曲折の積み重ねなのである。
それを強く感じずにはいられなかった。
『永遠についての証明』の次に読むおすすめ小説

ここでは、『永遠についての証明』がおもしろかった!と感じたあなたに、次に読む小説のおすすめを独断と偏見で紹介します。
感じる雰囲気やテーマに共通点が見いだせた作品を紹介しています!
【同著者】次に読む作品のおすすめ『われは熊楠』
書名:われは熊楠
著者:岩井圭也
出版社:文藝春秋
出版年月:2024年5月
本の形態:単行本(2025/6/23時点)
ジャンル(またはテーマ):人物伝(?)
その他:第171回(2024年)直木賞候補作
ISBN:9784163918402
主人公は「知の巨人」として知られる世界的博物学者の南方熊楠(みなかた くまぐす)。
彼はこの世のすべてを知りたいと望み、記録していく。先生は、書物と自然。
少年時代から植物や昆虫を採集にあけくれる日々を過ごす。熊楠の興味は尽きず、あらゆる学問に手を出し、その知識はとどまるところを知らない。
年を重ね、父の反対を受けつつも、海を渡って研究にいそしむ。ところが、ときおり現れる癇癪が邪魔をして周囲とうまくやっていけない。
研究を続けるには金がいる。理解ある弟が金を工面してくれるも、ある日仕送りが途絶えてしまう。
そうこうするうち、息子にも不穏な影がさし――
世界の探求に生涯をかけた男の物語。
【おすすめポイント】
『永遠についての証明』と同様に、興味の赴くままに学問に没頭する人物の物語です。
『永遠についての証明』は才能によってできた友人や先生とのつながりが、才能のせいで破綻していく、いわば才能に翻弄される物語でした。
一方、『われは熊楠』は才能もさることながら、その飽くなき探求心が描かれます。ここでも重要になってくるのは、熊楠と周囲の人との関係性。研究への情熱と人間ドラマがこれでもかとばかりに表されていて、一人の人物の生涯を追体験できます。
岩井圭也さんの他のおすすめ作品については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひお読みください。きっと、読みたい本が見つかりますよ!
【別著者】次に読む作品のおすすめ『spring』
書名:spring
著者:恩田陸
出版社:筑摩書房
出版年月:2024年3月
本の形態:単行本(2025/6/23時点)
ジャンル(またはテーマ):バレエ小説
その他:2025年本屋大賞6位
ISBN:9784480805164
彼の踊りを目にした者は、恐怖すら覚えた。
稀代のバレエダンサー・萬春(よろず はる)。
ライバルや叔父、幼なじみの視点で語られる彼は、幼いときからすでにその才能を発揮していた。
そんな彼は、まるでそれがはじめから決められていたことかのように、順調に成長し、ダンサー兼振付家の道を歩む。
彼に触れた者すべてを虜にする、圧倒的な才能。
芸術の魔力に取り憑かれた者たちの、息をのむほど美しい物語。
【おすすめポイント】
圧倒的な才能という点で、本書は共通しています。しかし、受ける印象はまったく異なっていて、こちらは陽の雰囲気がいたるところで、静かに醸し出されています。
才能に人が集まり、そんな彼らと共にどんどん新たなものが生み出されていく。
瞭司とは対照的な環境です。人を惹きつけ、自らさらに上へと高みへ駆け上がっていく姿は、神々しさすらあります。
バレエという視覚効果の高いものを、文章で的確に表す様は、音楽を文章で美しく表現した同著者の『蜜蜂と遠雷』を思わせました。




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