第172回直木賞を受賞した伊与原新さんの『藍を継ぐ海』は、科学とヒューマンドラマが美しく融合した、心温まる5つの物語が収められた短編集です。
この記事では、「『藍を継ぐ海』が気になっているけど、どんな話?」「読んだけど、他の人の感想も知りたい」そんなあなたの疑問にお答えします。
さらに、『藍を継ぐ海』の世界に魅了されたあなたへ、次におすすめしたい小説も厳選して紹介するので、ぜひ次の1冊を見つける参考にしてください。
特に読書初心者の方は、この記事を読めば「次になにを読もうか」と悩むことがなくなりますよ!
- 『藍を継ぐ海』の各話のあらすじ
- ネタバレありのレビュー
- 『藍を継ぐ海』の次に読む小説
『藍を継ぐ海』基本情報
書名:藍を継ぐ海
著者:伊与原 新(いよはら しん)
出版社:新潮社
出版年月:2024.9
小説形態:短編集
ジャンル(またはテーマ):科学×ヒューマンドラマ
その他:第172回(2024年下半期)直木賞受賞作
ISBN:9784103362142
科学にまつわる5つの短編で構成された短編集。
5つの作品はまったく異なる「科学×ヒューマンドラマ」ですが、想像される景色はどこか似ていて、希望が灯るような優しさに満ちています。
5つの物語からなる『藍を継ぐ海』

ここでは、それぞれの物語について書店POP風に紹介します。
少しでも興味を惹かれるものがあれば、ぜひ読んでみてくださいね!
- 夢化けの島
- 狼犬ダイアリー
- 祈りの破片
- 星隕つ駅逓
- 藍を継ぐ海
夢化けの島
山口のある島で、かつて萩焼に使われたという土を探す元カメラマン。
不思議な雰囲気のある男は、一体なんのために土を探しているのか――。
狼犬ダイアリー
会社を辞め、奈良の山奥の借家に移り住んだ、フリーWebデザイナーまひろ。
ある夜、まひろは狼の遠吠えのような声を聞く。その数日前には、大家夫妻の息子が狼を見たと言っており――。
祈りの破片
役場に勤める小寺は、ある日「えすか(怖い)家だ」と、ある空き家について近隣住民から相談を受ける。空き家から、夜中に青白い光が漏れていたというのだ。気乗りのしない小寺だったが、上司からのプレッシャーに負け、現地を訪問してみると中には思いもよらないものがあった。
星隕つ駅逓(ほしおつえきてい)
北海道の北東に位置する遠軽町に、隕石が落ちたらしい。民間団体のメンバーたちが、隕石を探しに町を訪ねてきた。郵便局に勤める信吾は、隕石に異常に興味を持った様子の、身重の妻の言動に不審を覚える。
藍を継ぐ海
徳島の海辺の町に暮らす中学生の沙月は、ある晩、町が保護しているウミガメの卵をいくつか持ち帰ってしまう。家で孵化させ、育てようとするが――。
『藍を継ぐ海』ネタバレありの感想・レビュー

ここからはネタバレしていますので、未読の方は先に小説をお読みくださいね。
登場人物に共通する「熱意」
5つの物語は、まったく別物の話。
登場人物もそれぞれ違いますが、ある共通点があるんです。
それは、それぞれの登場人物たちが持つ「熱意」。
例えば、1話目『夢化けの島』に登場する元カメラマンの光平は、萩焼の名家の末裔で、自身も幼いころから技を仕込まれていました。
かつて萩焼に使われたという伝説の土を探す熱意が、岩石や地質を専門分野とする研究者の歩美と引き合わせたのでしょう。
歩美もまた見島の岩石の研究に類まれな熱意を持っていました。彼女の知識と、独自にまとめた地図で光平の求める「伝説の土」の発見に協力します。
熱意と熱意が掛け合わされば、驚くようなことも成し遂げられる。
そんな希望に満ちた物語でした。
『祈りの破片』では、入庁当初のやる気をなくしてしまった役場勤めの小寺が登場します。役場の前例踏襲主義にすっかり慣れてしまった彼は、事あるごとに意見を求めてくる新たな係長に困惑していました。
そんな折に持ちかけられた空き家の相談。空き家には、詳細な記録と共に大量の岩石や瓦、コンクリート片が残されていました。それらはすべて長崎に落とされた原爆の記録。
原爆の資料を詳細に残した1人の男性の熱意を受け取った小寺は、思いを引き継ごうと、再び熱意を持って仕事に取り組むのです。
人の熱意は伝わる。たとえ、そこに本人がいなくとも。
残されたものから人は熱意を汲み取るのです。
そうして、熱意は人から人へと、伝播していきます。
これは彼らの「熱意」の物語。
強すぎる思い
『星隕つ駅逓』と表題作『藍を継ぐ海』には、気持ちが強いあまりに、良くないことをしてしまいそうになる人が登場します。
彼女たちが踏みとどまれたのは、理解者の存在があったからでしょう。涼子には夫の信吾がいたし、沙月には近所に住む佐和がいました。
自分を理解してくれる人が傍にいたからこそ、隕石を見つけた場所の本当のことを言えたし、ウミガメの産卵巣にタマゴを返すことができました。
自分の境遇や家族を思うがゆえの強すぎる思いは、ときに空回りしてしまいます。だから、冷静な視点を持った周囲の人の存在はとても重要なのだと感じました。
『藍を継ぐ海』の次に読むおすすめ小説

ここでは、『藍を継ぐ海』がおもしろかった!と感じたあなたに、次に読む小説のおすすめを2冊紹介します。
- 「科学×ヒューマンドラマ」の『八月の銀の雪』
- 「科学×ミステリー」の『最後の鑑定人』
『藍を継ぐ海』と同じ著者の小説と、別の著者の小説です。
感じる雰囲気やテーマに共通点が見いだせた作品を紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。新たな本との出会いのきっかけになれば、嬉しいです。
「科学×ヒューマンドラマ」の『八月の銀の雪』
書名:八月の銀の雪
著者:伊与原 新
出版社:新潮社
出版年月:2020.10
小説形態:短編集
ジャンル(またはテーマ):科学×ヒューマンドラマ
ISBN:9784101207636
その他:
【第164回(2020年下半期)直木賞候補作】
【第34回(2020年度)山本周五郎賞 候補作】
【2021年本屋大賞第6位】
【おすすめポイント】
地球の核やクジラの歌、珪藻アート、鳩の帰巣本能といった「科学」がテーマになった短編集。知識としてもおもしろく、加えて人のあたたかさが感じられる作品です。もがきながら日々を生きる登場人物たちは、私たちに光を与えてくれます。
こちらも『藍を継ぐ海』と同様、「科学×ヒューマンドラマ」の5編で構成されています。
『藍を継ぐ海』が刺さった方には、『八月の銀の雪』も、ぜひ読んでもらいたいです!
「科学×ミステリー」の『最後の鑑定人』
書名:最後の鑑定人
著者:岩井圭也
出版社:KADOKAWA
出版年月:2022.7
小説形態:連作短編
ジャンル(またはテーマ):科学×ミステリー
その他:2025年7月期フジテレビ連続ドラマ化(主演:藤木直人さん)
ISBN:9784041161180(文庫)
元科捜研のエースで「彼に鑑定できなければ、誰も鑑定できない」と言わしめる土門誠が、民間の鑑定所を舞台に事件を解決に導いていく科学捜査ミステリー。
【おすすめポイント】
こちらも科学がキーになる物語です。ミステリ好きなら、こちらもぜひおすすめしたい1冊です。シリーズものとなっており、現在シリーズ3作目まで出版されています。
- 最後の鑑定人
- 科捜研の砦
- 追憶の鑑定人(最新刊:2025年9月2日発売)
基本は刊行順どおりに読むのがおすすめですが、作中の時系列としては、2作目の『科捜研の砦』が先なのでそちらから読んでもOKです。
- 科捜研の砦
- 最後の鑑定人
- 追憶の鑑定人
『藍を継ぐ海』まとめ
- 『藍を継ぐ海』は、5編の短編からなる「科学×ヒューマンドラマ」
- 読むと、あたたかな気持ちになれる
- それぞれの物語に出てくる登場人物に共通するのは「熱意」
- 『藍を継ぐ海』が好きなら、同著者の『八月の銀の雪』もおすすめ
- ミステリも好きなら、『最後の鑑定人』もおすすめ




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