2021年に『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこさんの、新たな境地を切り拓いたサスペンス巨編『月とアマリリス』。
ある事件をきっかけに事件記者を辞め、静かに暮らしていた飯塚みちるの日常は、故郷で発見された遺体によって再び動き出します。
なぜ彼女は死ななければならなかったのか?
真相に近づくほどに浮かび上がる人々の孤独と、声なき声の行方とは――。
この記事では、あらすじやネタバレありの感想に加え、元司書である管理人が選ぶ「次に読む本のおすすめ」を紹介します。
この記事を読めば、次に読む本に迷いません!
- 『月とアマリリス』のあらすじ
- ネタバレありのレビュー
- 『月とアマリリス』の次に読む小説
『月とアマリリス』基本情報とあらすじ
書名:月とアマリリス
著者:町田 そのこ
出版社:小学館
出版年月:2025年2月
本の形態:単行本(2025年8月現在)
ジャンル(またはテーマ):ミステリ、人間ドラマ
ISBN:9784093867450
白骨遺体に残されたメッセージに書かれた名前は、私と同じ名前だった――。
過去の罪に苛まれ、記者という仕事を捨てたみちる。
故郷で見つかった遺体が、再びみちるを事件へと引きずり込む。
なぜあの女性は死ななければならなかったのか?
真相に近づくほどに浮かび上がる、人々の孤独。
声なき声を拾い上げようと奔走するみちるに待っている結末とは――
『月とアマリリス』の主な登場人物

吉屋スミ…高蔵山で遺体で見つかる。背の曲がった老婆
長野…吉屋スミが住むアパートの大家
〈菅野家〉
菅野茂美…みちるの取材中に浮かび上がる人物
保志…茂美の兄
知依(ちえ)…保志の妻で、茂美の義姉
伊東美散(みちる)…みちるの同級生。
吉永…みちるの同級生。
伊東薫…美散の義母
伊東豊香(ほうか)…美散の義妹。小児がんで8歳で亡くなる
大平鶴代…美散の家の近所に住み、美散の拠り所となっていた女性
大浦…美散の祖父
『月とアマリリス』ネタバレありの感想・レビュー

「本屋大賞作家の新境地となるサスペンス巨編」とうたわれるこの作品。
町田そのこさんのこれまでの作品とは毛色が違う、ミステリ色強めの物語でした。しかし、人間ドラマは健在で、グイグイ読ませる筆致は「さすが!」の一言。
登場人物ひとりひとりの、人となりが伝わってきて、ページをめくる手が止まりませんでした。
ここからは、作品の結末に言及していますので、未読の方は先に小説をお読みくださいませ!
人と違う生き方
この作品には、人と違う生き方を選ばざるを得なかった人物が何人も出てくる。
自分の性と心が合っていないことに気づいた井口もそのひとりだ。
本当の気持ちを人に言うことができず、いつもなにかを隠して人と付き合うのは辛い。
かといって、話してしまうことは周囲の人と溝を作るリスクもある。
そんな井口の葛藤に母は気づいていながら、気づかないふりをしていた。しかし、認知症によって施設に入る直前にそのことを井口に謝るのだ。
自分ではどうにもできないことがある。
そのことに自分が老いて初めて気づいたのだ、と。
周囲から理解してもらえないことは苦しい。
だが、息子を理解できなかったことで井口の母もまた苦しんだのだろう。
友達でも家族であっても、別の人間を完全に理解するなんてできない。
でも、理解する努力だけはしていきたいものだと思う。
それが大切な人であれば、なおさら。
愛を知らない女と男
子どものころに思うように愛してもらえなかった美散と茂美。
彼女たちは、自分に好意を見せ、束縛する男のそれを愛だと思ってしまった。
途中でおかしいことに気がついても、もう逃げ出すことはできず、悲しい方向へ向かってしまう。
彼女たちを苦しめたタカハラこと家原崇もまた「愛」を知らなかった1人に相違ない。
幼いころに事故で亡くなった両親。
束縛の強い崇の父が母の腹へ入れたタトゥー。
それと同じことを、今度は自分が美散にした。
いろんな女性に手を出しながらも、美散にだけタトゥーを求めたのは、愛する方法がわからなかった崇なりの「愛」だったのだろうか。
もしそうだとしたら、これほど悲しくて暴力的な「愛」はない。
元司書セレクト『月とアマリリス』の次に読むおすすめ小説

ここでは、「『月とアマリリス』がおもしろかった!」と感じたあなたに、次に読む小説のおすすめを紹介します。
町田そのこさんの小説と、別の著者の小説に分けています。
「この作品が好きな人はこっちもきっと好き!」という小説を選んだので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
新たな本との出会いのきっかけになれば、嬉しいです。
【同著者】のおすすめ小説『わたしの知る花』
書名:わたしの知る花
著者:町田そのこ
出版社:中央公論新社
出版年月:2024年7月
本の形態:単行本(2025.8.29現在)
ジャンル(またはテーマ):
ISBN:9784120058066
ある町に現れた、犯罪者だと噂される老人。彼は、77歳で誰にも看取られることなくこの世を去る。部屋に残されていたのは、彼が手ずから咲かせた美しい花々──。
生前、彼と交流があった女子高生の安珠は、その死をきっかけに彼の人生を調べ始める。
すると、老人はどうやら祖母と知り合いのようで──。
【こんなあなたにおすすめ】
- 人間ドラマが好き
- 繊細な心理描写を味わいたい
- ミステリー要素のある小説が好き
- 泣ける物語が読みたい
町田そのこさんの小説を9割読んでいる管理人が、そのなかでも1,2を争うくらい好きな作品です!
人と人とのつながりは、ときに強く、ときに脆くもある。小さなことで人は簡単にすれ違ってしまうからこそ、きちんと言葉で伝えなきゃいけない、と感じさせてくれる物語です。
【別著者】のおすすめ小説『恋とか愛とかやさしさ なら』
書名:恋とか愛とかやさしさ なら
著者:一穂 ミチ
出版社:小学館
出版年月:2024年11月
本の形態:単行本(2025.8.29現在)
ジャンル(またはテーマ):人間ドラマ
その他:2025年本屋大賞 第7位
ISBN:9784093867399
カメラマンの新夏は、交際して5年の恋人である啓久からプロポーズを受ける。しかしその翌日、啓久が通勤中に盗撮で捕まってしまう。「二度としない」と言う啓久を信じたいと思うものの、心の整理がつかず葛藤する新夏。
信じるとは何か、許すとは何かを、突きつけられる物語。
【こんなあなたにおすすめ】
- 『月とアマリリス』が好きだった
- 人間ドラマが好き
- 人の心の機微や、複雑な感情を描いた物語が好き
- 「自分ならどうするか」を深く考えるのが好き
『恋とか愛とかやさしさ なら』については、下記の記事で詳しく紹介しています!
気になった方は、ぜひこちらも参考にしてください。
『月とアマリリス』まとめ
- 『月とアマリリス』は、町田そのこさんの新境地となるサスペンス巨編
- 『月とアマリリス』は「ミステリー×ヒューマンドラマ」
- 繊細な心理描写が好きなら、一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさ なら』もおすすめ





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