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2025年本屋大賞受賞作『カフネ』|ネタバレありの感想

小説

『カフネ』ネタバレありの感想・レビュー

2025年本屋大賞受賞作の『カフネ』について、ネタバレありの感想を思いのままに綴りました。

すでに読まれた方は、ぜひ読んでみてください。

あなたはこの物語をどんな風に感じたでしょうか。

愛の物語

この物語は「愛」の物語だ。そう、ふと思った。

愛されたい。そう願う人は多い。

でも、愛されることは無条件に良いことではない。

この物語を読むと、そんな風に感じられる。

だってその「愛」は、受けとる側にとって、相手を気遣わなくてはならない理由になってしまうこともあるから。

愛されているとわかっているから、相手のことを大事にしなくてはと思ってしまう。そんな優しい春彦は、周囲の人の笑顔のために自分が笑顔を絶やさない。

そうして自分の気持ちに蓋をして過ごすことが当たり前になってしまっていたのだろう。

傷を持つ者たち

この作品の登場人物は、みんな心に傷を持った人たちだ。

そして、傷があるからこそ、他者に対して思いやりを持っている。

母親にまで「真面目すぎて疲れる」と言われる薫子。

「家族」というものに対して鬱屈した感情を持っている公隆。

自分に近づいた人がみんないなくなってしまうと感じているせつな。

双子を産んでいる間に恋人に逃げられた斗季子。

そして、自分を犠牲にしても相手を笑顔にさせることを優先してしまう春彦。

彼らはみんな胸に深い傷を負っている。

春彦の同僚の港もそうだ。

ずっと自分の気持ちに嘘をついて、生きてこなければならなかった。

でも、それらの傷を負っても人生は続く。生きていかなければいけない。

なにもかもを乗り越えてこの世界で生きていくためには、あたたかいご飯がいる。

せつなの悲痛な叫び

みんないなくなっちゃう。

小学6年生のとき、お父さんが迎えに来てくれなかったときから、ずっとせつなはその思いを抱えていたのだろう。

お母さんがいなくなったときは、まだお父さんがいたし、みんないなくなるなんて思っていなかったかもしれない。

でも、お父さんが亡くなり、引き取ってくれた叔母さんも亡くなり。

自分の周りにいる大切な人は、みんないなくなるんだと思ってしまったのだと思う。

それでも懸命に生きて、きちんと働いて過ごしてきた。

そこでまた、大切な友人だった春彦が死んだ。

あぁ、まただ。自分の大切な人がいなくなってしまった。

きっとそう思ったのではないだろうか。

だから、せつなは薫子を遠ざけようとした。

「もう私に関わらないでください」

そんな風に言って。

関わって近づきすぎて、また誰かがいなくなるのはもう耐えられないから。

そのせつなの気持ちを思うと、とてつもなく切なくなる。

どうにか幸せになってほしいと切に願った。

春彦の思い

彼はきっと姉とせつなを引き合わせたかったのだろう。

だから、誕生日プレゼントと一緒に、「せつなさんに渡してください」と植物を姉に贈ったのだろう。

その頃には、自分がもう姉やせつなの傍にいないことを見越して。

春彦は、きっと姉が両親に対して複雑な思いを持っていることも知っていただろうから。

そして、春彦は同時に、せつなに姉を引き合わせたいとも思っていたに違いないのだ。

大事な人はみんな自分の元からいなくなってしまう、と心の奥底で思っているせつなに。

結果的に、思いもよらない形で春彦はこの世を去ってしまうけれど、

春彦は2人をつないでくれた。

春彦は、姉とせつなはきっと互いのことを助け合えると信じていたに違いない。

nanakko

元司書で現ライターのnanakkoです。
 
子どものころから本が大好きで、大学では小説創作を専攻。
会社員を経て、国立大学図書館の司書に。
 
小説、お芝居(映画・ドラマ・舞台・アニメなど)、音楽が好き。
プロの技が詰まったエンターテイメントに感動します。
 
このブログでは、私が好きなエンタメ作品について共有できればと思っています!
 
心が動いた瞬間を忘れないよう、文章で記録していきます。

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小説本屋大賞・直木賞
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