葬儀会社「芥子実庵」に関わる人たちにまつわるあれこれ。
と言ってしまえば、それまでなのだけれど、この連作短編集はそんな薄っぺらい言葉で言い表せるものではない。
もっと深い部分で人間の恥部をさらけ出されているような作品なのだ。
『夜明けのはざま』の基本情報とあらすじ
書名:夜明けのはざま
著者:町田そのこ
出版社:ポプラ社
出版年月:2023年11月
単行本/文庫:単行本
ジャンル(またはテーマ):人間ドラマ
ISBN:9784591179802
舞台は、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。
ここで働く佐久間真奈は、仕事と結婚のはざまで揺れていた。
そんなとき、友人の訃報が舞い込み――
『夜明けのはざま』の感想・レビュー【ネタバレなし】

『夜明けのはざま』を読んで感じたこと、考えたことを書いています。
ネタバレはしていないので、未読の方も良ろしければ、ぜひご覧ください。
誰かの当たり前
私はおそらく「偏見」というものが嫌いだ。
男だから女だから、といった考え方も。
この物語には、多くの心ない言葉や偏見に傷つく人が登場する。
読んでいる最中は、心を大きく揺さぶられ、苦しかったし憤りもした。
でも、私だってどこかの面では偏見を持っているかもしれない。
気づいていないだけで、誰かから見れば私も偏見を持つ人と断じられる可能性もある。
そう考えると、途端に不安になる。怖いと思う。
自分の当たり前は、他人の当たり前ではない。
でも、自分でそのことに気づくのは難しい。
だって、自分の中では当たり前のことだから。
そんな人がたくさん登場する。
相手を傷つけていることにも気づかない。
当たり前が当たり前になるのは、育ってきた環境や経験にもよるだろう。
それは今さら変えられない。
そもそも、まったく偏見を持たずに生きている人なんているのだろうか。
立っている場所の違いで、考え方は大きく変わる。
でも、せめて言葉で誰かを傷つけないようにしたい。
「怖さ」を捨てない。それが案外大事なのではないだろうか。
考え方が同じ人なんていない
カップルやパートナーとの別れの原因で多く挙げられる「価値観の違い」。
そういえば、私は子どものころ「価値観の違い」と出てくるたびに、「なんでも鑑定団」を想像していた。
「価値」という言葉から、物の価値を判断する目を想像していたのだろうと思う。
それもあながち間違いではない気がするが、価値観はもっと広い意味で捉えられる。
価値観の違いは「物事に対する考え方の違い」と言い換えてもいいかもしれない。
作中で登場する人物たちは、周囲の人との価値観の違いに悩み、惑い、葛藤する。
妥協点はどこにあるのか、そもそも妥協して良い問題なのか。
そうして迷いながらも前に進み、日々を進めてゆく。
大事な人だからこそ、余計にすれ違う。
話し合っても平行線で、どうにもならない。
その切なさが胸に迫ってくる。
誰かと生きていくということは、難しい。
誰かと生きていくことは、当たり前なんかじゃなくて「奇跡」なのかもしれない。



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