役者ってすごい
伊藤英明が演じたキャラクターは、二面性がある。
明るさと狂気。
でも、その大元の感情は同じで、どちらも「娘への想い」なのだ。
娘を大切に思う気持ちが強いがゆえに、おかしな方向に行動してしまうのだが、その気持ちの論理に矛盾は感じられない。
「娘に直接言えばいいのでは?」という意見もあるだろう。
彼も最初そう考えたに違いない。
しかし、反抗期の娘は自分の話を聞かない。だったら……と考えた末の行動なのである。
とはいえ、いくら娘のためであっても、さすがにやりすぎである。
ここが役者の腕の見せ所なんじゃないかと、私は思った。
普通なら「そこまでやらないでしょ」となってしまうところだが、そこまでの行動に至ってしまったことを納得させる芝居だった。
彼の出てくるシーンはそこまで長いものではない。
それでも、彼のキャラクターは存分に伝わったし、見せられていない彼の背景すら伝わってきたように思う。
役者というのは、シーンにない背景すらも醸し出せるのだ。
伝える部分と伝えない部分
一方、今をときめくMrs. GREEN APPLEの大森元貴が演じた謎の男・鈴木。
いい意味で、鈴木の背景は驚くほどに伝わってこない
役柄上、あまり伝わりすぎてはいけない。
鈴木自体は原作には出てこないキャラクターだが、本を先に読んでいると「あの彼なのだろうな」となんとなく予想しながら見ていた。
鈴木や警備員の桐山はもともと原作にない設定になるため、オリジナルなストーリーになるのだが、ここの2人の関係性はもう少しあっても良かったように思う。
桐山がどうしてそこまで鈴木を信頼しているのか、どのようにして仲良くなっていったのか。
尺の関係もありそうだが、その部分をもう少し詳しく見たかった。
だが、制作陣はあえてそうしているような気もするのだ。
仲良くなった経緯やエピソードを入れれば、どうしても鈴木に関するヒントが表れてしまう。
桐山は鈴木を友だちだと思い、慕っている様子を見せているが、鈴木はおそらく違うだろう。
その闇の部分を見せずに2人のエピソードを入れることもできるが、その辺りのバランスは非常に難しい。
そう考えると、伊藤英明が扮する父親は視聴者に背景を隠す必要がなかった。だから、存分に役者の技を見せてくれた。そうして、私たちは見えていない余白すら埋める。
対照的に、謎を持った鈴木はあえて語られず、終盤まで謎の存在としてそこにいるのだ。



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